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蠢蝦螽蟷昆蟲記

sawadaidae.exblog.jp

侵略的暗黒卿

巷を騒がせているカミキリ界のダークサイドを観察してきた.

その名も「Aromia bungii」一昨年辺りからその存在が確認され,市や自治体などにより様々な対策がなされているが・・・実際に現地の状況を確認しようと,草加市まで赴く.

ネット上に公開されている発生箇所は青柳公園という葛西用水路付近の公園.何の変哲もない灌漑用水路だが,水路沿いに美しい桜並木が並ぶ.
本種はそのサクラをホストとして利用している.

公園付近に到着すると,根元から2m程の部分にかけてネットに覆われたサクラが多く目についた.どうやら本種の対策らしい.

発見されてから2年は経過しているし,既に根絶に近づいているはず・・・





・・・と思った矢先である.



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開始30秒の出来事だった.
何の苦もなく出会えてしまった.


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クロジャコウカミキリ(クビアカツヤカミキリ) Aromia bungii (Faldermann, 1835)
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とりあえずその大きさに驚いた.小型のミヤマカミキリ位はある.こんなものが全国に広まったら間違いなく脅威となる.探せばいるわいるわ,30分で3頭も追加してしまった.現在の発生対策では抑制できていないものと思われる.

私が見た限りでは,幼虫の脱糞口や羽化済みの脱出口をコーキングや木工用ボンドで穴埋めし,成虫が産卵場所として好む木の根元付近をネットで覆うというもの.

カミキリの幼虫の穿孔能力を舐めているとしか言えず,ネットについても成虫が難なく脱出できる隙間が開いているものさえ確認できた.
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サクラは無数にあるため仕方がないとは思うが...これでは分布拡大するのも時間の問題である.

ネットを巻く位なら農業用のマルチやサイレージ用のビニールなどで隙間がないよう密着させて幹に巻き,放置したほうが良さそうだが・・・(アオカミキリ類の成虫は顎の力が弱いため,厚いビニールを食い破ることは少ない)
ビニールならば安価であり,主幹に残効性のある薬剤を処理しておけば雨で薬剤が流れることもないだろう.あくまでネット内に脱出した個体を捕獲・殺虫するスタイルを貫きたいのか.

付近の公園を虱潰しに捜索したところ,青柳公園から約2kmの所に位置する「そうか公園」内の桜並木においても,本種の脱出口と思われるものとフラスが確認できた.確実に付近へ広まってしまっている.
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そうか公園内の本種による加害木と思われる木.
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捕まえると強烈な匂いを発する.オオアオカミキリやジャコウカミキリの匂いを何十倍にも増幅させた感じ.匂いのする白濁液を分泌するのが確認できた.Callidiopiniも似たような液を分泌するが,量が半端ではなかった.
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現在発生エリア内にしか本種を警告するポスターがなかったが,最寄り駅の路線沿いや各小中学校にも駆除を促すポスターを貼っておくべきだとは思う.子供の好奇心の力は凄まじいため,活かさない手はないのではない.ただし捕まえたものを放たないよう注意の徹底は必須となるが.


このカミキリについての議論は尽きることはない.


駆除兼採集イベントのような企画を行政・市民・博物館・NPO等が協議し,開催していくことも考えなくてはならない.カブトムシを捕っている場合ではないのだ.

一刻も早く殲滅できるよう.カミキリ屋にノルマを課すのも面白い.(1人50頭駆除しないと別の採集に行けません)
# by wriggle00 | 2015-06-15 15:18 | Cerambycidae

隙間に潜む暗殺者

クチキゴミムシ Morion japonicum (Bates, 1883)

沖縄本島にて採集.

こちらもホソキボシアオと共にかなり好きなゴミムシ.
Catascopus程ではないがかなり素早い動きをする.常に物陰に隠れようとするシャイな子.
ゴミムシには珍しく横移動が可能.どの角度からでも樹皮下に入り込むことができる.
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全国的に珍しい種.朽木の奥深くに入っている訳ではなく,手で剥がせる程度の部分にいることが多い.
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前脚脛節の形状が素晴らしい.頭部も大きく顎の力も強い.樹皮下に棲む昆虫類にとっては脅威となるだろう.
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今回の生息環境はジュウジエグリゴミムシが多数いる様なシイ類の立ち枯れ.根元付近のシロアリ営巣部に複数個体を発見.好白蟻性ではないにしろ何か関連はありそうな予感.重要な餌資源になっているのかも知れない.

匂いはクロカタビロ・ナガゴミとアトキリ系統の匂いを混ぜた感じ.良い匂い.
# by wriggle00 | 2015-05-15 18:25 | Carabidae

芒と共に生ける者

私の最も好きなゴミムシであるホソキボシアオゴミムシの生態写真が撮れた.以前の記事にて多少は触れている虫だが,当時は捕獲するのに必死で生態写真を撮る暇など無かった.動きが恐ろしいほど速く捕獲には相当な困難を要する.
本種はススキ等の草本上及び周辺に生息し,成虫は主に鱗翅目の幼虫を捕食している.日中はススキの茎と葉の隙間や根元付近の隙間に身を隠している.夜間は捕食・配偶行動を盛んに行い,根元から葉先を往復するように移動しながら他株へと移動する.

本種を含むSubgenus Lissaucheniusが葉上生活に特化しているという訳ではなく,Subgenus Chlaenioctenusの中にも本種のような形態を持つ種がいるが,実際に生態を観察したわけではないので非常に気になるところ.タイ・ラオスでは本種と同様にススキを生息場所とする種を採集したことがあるので,東南アジア一帯にはかなりの種がいる模様.

台湾にはSubgenus Lissaucheniusに含まれるチュウジョウアオゴミムシ Chlaenius (Lissauchenius) chuji (Jedlicka, 1946)が生息しており,同様の生態を持つ.かつて我国のホソキボシアオゴミムシがチュウジョウアオゴミムシとされていた時代もある.台湾においてもホソキボシアオゴミムシが生息している可能性はあるので,是非とも調査をしたい.(Web上には台湾産のホソキボシアオゴミムシと思われる個体の写真があるのだが,符節・脛節の全てと腿節の一部が黒化していた.これは琉球産スジアオゴミムシ・コキベリアオゴミムシにも同じ色彩変異が見られる.)

ホソキボシアオゴミムシ Chlaenius (Lissauchenius) rufifemoratus (Macleay,1825)
沖縄本島にて.

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本種を採集するためにはビーティングネットの使用が最適.ススキの根元にビーティングネットを敷き,ススキを複数束ねてからかなり強い力で叩く.一撃で落とし,すぐさまネットを引き抜かなければ,ネットから直ぐに逃げてしまう.そのくらい高速なのである.夜間ならば徘徊している個体を素手で捕らえるとも可能.珍品とされているものの,採集法をマスターすればきっと何処でも捕れるに違いない.
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長い後脚を巧みに使い,細いススキの茎を高速移動する.他のアオゴミムシには絶対に出来ない芸当だ.
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ススキの葉中に潜り込んでいる個体.日中は大抵こうやって過ごしている.
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気になる匂いは他のアオゴミムシ類と変わらなかった.
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逆さまでも難なく歩行できる.捕食シーンを観察できなかったのは残念でならない.
# by wriggle00 | 2015-05-15 17:58 | Carabidae