蠢蝦螽蟷昆蟲記

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南信、春の主を求めて

 ゴールデンウイークはカミキリ屋にとって悩ましい連休.西表島に行く金も無く,近場で採集するのも味気ない.色々妄想を膨らませた結果,伊那のTsujiusに結論は落ち着いた.今年は季節が遅れていて,Tsujiusもキツいという情報が入ったが、カエデノヘリグロハナやトウキョウトラ位は採れるだろうという安直な考えで出撃した.
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5月2日
 夜間,高速を利用し,伊那市へと向かう.混雑はしていたが渋滞に巻き込まれることなく目的地に到着.現地はやはり寒く,桜がまだ満開であった.その夜は適当な場所で車中泊をし,次の日の決戦に備え就寝.

5月3日
 天気予報はよろしく無かったが奇跡的に雨は降らず,曇りと晴れ間が交互に移り変わる天気.訪花性甲虫はこのような天気の方が集まりが良いのだ.早速南アルプス林道を目指し,車を出す.しばらく山道を進むと戸台大橋が見えてくる.例年なら橋のすぐ近くのカエデにカミキリ屋が群がっているはずだが,人の気配は無く橋の門番のおっさんもまだ虫屋は来ていないとのこと.このポイントを独り占め出来るとはこの上ない贅沢だ.
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 戸台大橋のカエデは見るからに虫が飛んで居ないので無視.林道を進んでいく事にする.
林道の脇には至る所にカエデが植栽されていて,毎年ここで激戦が行われている事を想像させてくれる.道中のカエデにも虫は少なく,昨日までの低温と雨が後を引いている感じがした.
昼には大きなカエデのポイントに着いたが,GlaphyraやMolorchusの類は姿が見えず,ヒナルリやハムシハナばかりがネットに入る.林道の上部はまだカエデが芽吹いてすらなく,中腹の4本に的を絞る.
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まさに春の林道.スズキコエンマやホシアシブトハバチが飛んでいる.

 午後1時過ぎ,山を張ったカエデのうちの一番標高が高い場所で虫の数がピークに.カエデの周りを舞っている虫を中心にネットすると,カエデヒゲナガコバネ,ホソツヤヒゲナガコバネがネットに入った.ようやく採集らしくなってきた.日差しが強くなるにつれ飛来してくる甲虫も増えてきたが,一向にツジウスの姿は見えない.カエデノヘリグロかと思いネットインする甲虫は全てダイミョウコメツキだし,昼飯を食べて居ない事もあり,早めに林道を降りる事に.

 何気なく林道を下っている道中,一本のカエデが目に入った.午前中には日陰で何も居なかったカエデに,おびただしい量の虫が舞っているのだ.ぱっと見でもGlaphyraが100頭前後飛んでおり,トラカミキリ,ハナカミキリの虫影も.
目を疑ったが,空腹感が一瞬で消え失せ,無意識に長竿を掴む手に力が入る!(虫屋の特殊スキル)

【これより一部虫屋にのみ通用する文体になります。ご了承下さい.】

ヒナルリ「ま、まずいあれはカミキリ屋じゃないか?」
キバネニセ「馬鹿なこの場所が発見されるとは‥‥‥」
シロトラ「ここは、我々で食い止めてみせる!」
沢田「雑魚共には用はない!死ねぇ!」
ヒナルリ,キバネニセ,シロトラ,「我々では手も足も出ない!ギャァァァァ!!!(殉職」
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まずはカエデ下部の量産機部隊を殲滅.
次は日当たりの良いカエデの上部のGlaphyra部隊を攻撃。

カエデ「まずい!こんなにも早く突破されるとは!」
ホソツヤ「これではこのカエデが落とされるのも時間の問題ですぜ‥」
コボトケ「ここは飛翔能力の高い我々でくい止めねば‥‥いざ参るッ!」
沢田「へっ!ネキに比べたらお前らなぞ止まって見えるわ!!」
カエデ、ホソツヤ、コボトケ、コジマ
「馬鹿な?!我々がこんなにもあっさりと?オノレェェェェ!!!(殉職」
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ホソツヤヒゲナガコバネカミキリ Glaphyra nitida nitida

次ッ!!日当たりの良いカエデ側面の拠点に潜む中堅を攻める。

トウキョウトラ「Glaphyra部隊が?!だが、あんな華奢な連中には負けねぇぜ」
ヤマトシロオビトラ「トウキョウさん流石っす!ツジさんには指一本触れさせやせんよ!」
カエデノヘリグロハナ「ごちゃごちゃうるせえ!」
沢田「おおお!これはこれは良いカミキリが!お前らは特別に亜硫酸ボトルに入れてやるぜ!」
トウキョウ,ヤマトシロオビ,カエデノヘリグロ「ギャアアアアアア!!!(殉職」
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カエデノヘリグロハナカミキリ Eustrangalis distenioides

・・・・・と言う感じで花の周りを掃除し,本命の飛来を待つ.
雲が覆ったり晴れ間が続いたりを繰り返し,カミキリ的に最高のコンディションが訪れた.小物の飛来数もさらに増加し,テンションも最高潮になった時であった・・・・・

長い触角,赤いエリトラ,極太の腿節!!!
カエデの上部に飛来した高速の物体を素早くネットインする.
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オニヒゲナガコバネカミキリ Molorchus pinivorus
「ピニボラかぁ~~~↓↓↓」
福島県の赤松土場で捕って以来の再会.目的の虫を狙っていると,どんなに良い虫でも価値を下に見てしまうのは,虫屋の悪い癖である.

ともあれ,Molorchusの類は何を捕ってもうれしいので,再度追加個体を狙ってカエデの上部を見上げる.すると,またMolorchini独特のシルエットが空中に現れた.pinivorusにしては少々小さく見えたが,難なくネットイン.

ん?


んんんんんんんんんんんんんん??!!
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「おおおお!ツジウスキターーーーーッ!!!」
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ツジヒゲナガコバネカミキリ Tsujius itoi K.Ikeda,2001

 初伊那で初ツジウス.本当に来て良かった.この個体が得られた時間帯はゴールデンタイムだったようで,その後も3頭のツジウスが追加できた.
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 初日にツジウスが捕れてからは,土場でRhagiumを摘んだり温泉に行ったりしてゆったりと採集を楽しんだ.採集日にはツジウスの発見者である辻栄介氏と伊藤秀史氏にもお会いできて非常に感動した.
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日に日にカミキリ屋さんの数が増えていく.
 ツジウスは最終日にもう一頭を追加し,遠征は終了した.
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アルプスの神様に感謝.

今回のタトウ
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非常に楽しい遠征でした.
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by wriggle00 | 2012-05-19 18:57 | Cerambycidae