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蠢蝦螽蟷昆蟲記

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堀祭【淡路島編】

1月12日
堀祭2日目,早朝より一行は淡路島へと目指す.
皆の希望であるアワジヒメオサ,オオオサ,シコクヤコン,ヒトツメアオなどを採集するのが目的だが,私の心中では密かにまだ見ぬ淡路マイマイへの欲望が渦巻いていた・・・マイマイだけに.

淡路島への出撃は今回で4度目だが,この島のマイマイカブリは相当掘りづらいものだということを感づいており,他のオサムシの「ついで」では可能性が限りなく低いと予測.一通り目標が片付き次第,目を付けていたポイントに寄り道することを考えていた.

まずは手始めにS山にてアワジヒメオサ,オオオサを狙うことに.昨年の感じでは何の苦労もなく対面できると思っていたのだが・・・山の斜面は酷く乾燥状態にあり,昨年かなり捕れたエリアでも全くいないという事態が起こった.ヒメオサから苦戦するとは思っていなかった・・・思いたくなかった.
掘り続けながら,何とか沢沿いの湿気のある環境を見つけて全員が採集できたが,予想以上に時間を使ってしまった.ヤコンに至っては私が1頭掘り出したのみであった.(まぁ,ヤコンだから良いけど)
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オオオサムシ Carabus dehaanii Chaudoir, 1848
やはり淡路のオオオサは綺麗.他のメンバーが得た個体の中にはより鮮やかなブルーの個体がいて羨ましかった.
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アワジヒメオサムシ
Carabus japonicus awajiensis Imura, Dejima & Mizusawa, 1993
昨年の猛暑&乾燥で個体数が減ったのか,または何らかの環境的要因があったかは分からないが,個体数が減少したように感じた.同じように,今年はどこへ行ってもオサムシが少ない気がするが気のせいか・・・?

ひとまず淡路特産のオサムシが捕れたのでヒトツメアオの開拓に移動.開拓とはいっても前回得られた崖の近辺を見てみる程度だが.このポイント周辺は海岸林が発達しており,ウバメガシ,トベラ,カクレミノなどが多く生えている.メンバーが放尿中に見つけたこの昆虫も海岸林に多く生息する種である.
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オオキンカメムシ Eucorysses grandis Thunberg,1783
生きているときや死んだ直後は美しいのだが,しばらくするとラードのように油が出て残念な感じになる.ゲンゴロウ感覚で標本にした方が良いかもしれない.

適当に車を走らせていると,岩がゴロゴロしている草地に面した崖を発見.崖には木の根が剥き出しになった個所がいくつもあり,おまけに粘土質.ゴミムシに最適な優良物件だ.
手鍬を入れると早速オオクビボソゴミムシ,フタホシスジバネゴミムシ,オオスナハラゴミムシ,ムナビロアトボシアオゴミムシ,ニセコガシラアオゴミムシなどが顔を出す!いきなりリーチがかかった!!
※単一の種がわらわらと出てくる場合の「ノーマルリーチ」に対し,複数種の集団越冬が連続する「プレミアムリーチ」の方が上位種(仮)の出現確率が高い(どうでもいい情報なのでスルーしてください).
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オオヨツボシゴミムシ Dischissus mirandus Bates, 1873
オオヨツはなんといっても匂いが良い.この芳香だけで白飯が3合は食える.
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ヒトツメアオゴミムシ Chlaenius deliciolus Bates, 1873

予定通りオオヨツ,ヒトツメアオが捕れたので普通種の生態写真でも撮ろうと,私は皆が掘った後の崖を再度掘り始めた.まだ捕っていないムナビロアトボシを目当てに木の根の密集した部分を抉る.中はいい感じに空洞になっており,いかにもゴミムシの入っているような空間だ.

穴を広げていくと・・・なぜか空洞の中は白いカビのようなもので真っ白になっており内には明らかに初めて見る昆虫の姿が.
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!!!!!!!!????????

・・・なんだ?!こいつは・・・!!!
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最初はゴキブリかシロアリの類かと思ったのだが,どうやら半翅目のようだ.それもウンカかヨコバイ,ハゴロモの系統.しかし,体に対して長すぎる口吻を持っており,地下にいたことから直感的にヤバいものだと感じた.ベトナムではアリヅカウンカの類が朽木内に居たのを目にした経験があるが,淡路島にそんなものがいるとは考えられない・・・ってヤバい!!!!潜ってく!!!!!!

とりあえず1頭は無事に確保したので,さらなる追加を求めて掘削を再開.もはやこの時,オサゴミのことはすっかり頭から消えていた.さらに3~4頭を捕獲するうちに,地表面から丁度25~40㎝の間に多く生息していることが分かってきた.
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掘っているとこのように「白い空間」が目印になるので,傷つけることなく確保できた.
この白い空間の正体だが,こいつが時折する動きによって作り上げられていたことを知る.確保する前に個体を観察していると,腹部を地面にこすりつけるように左右にふりふり.まるで「カゲロウ」のようだ.この動きによって蝋物質が腹部から外れ,白い糸に包まれた住処を作り上げていたのだった.



そして・・・


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A森が掘り出したこいつの真の姿.
そう,白いカビのような物質は腹部から分泌している蝋物質だったのだ.この蝋物質は非常に外れやすく,恐らく今までの個体は手鍬で掘る動作の振動で落ちたか,その振動で自身が激しい動きをしたために外れたのだろう.

そしてここで新たな疑問が.散々この崖を掘ってきたわけだが,その間何頭ものムカデやゴミムシに遭遇した.
にも拘らず何故このウンカ達は土中の広い空間をできていたのだろう?
私に考えられる可能性としては・・・この蝋物質の忌避効果ではないかと思われるが,謎は深まるばかりである.非常に興味深い.


その後,忘れかけていたマイマイカブリの捜索にまたもや大移動.
沈んでいく夕日の中,淡路マイマイはA森の手にだけ握られていた......

ヒシウンカで全ての運を使い果たしていたようだ.






後日,A森が即行で農大に持って行ってくれた.三田さんから林先生に連絡が行き,本種は
ヒシウンカ科の若虫と判明.国内では殆ど情報がないということだったので,A森に生きたまま持って帰ってもらって正解だった.

しかし,ヒシウンカとは・・・

あいつらの幼虫が土壌性だなんて・・・
by wriggle00 | 2014-02-13 23:01 | Carabidae