蠢蝦螽蟷昆蟲記

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保津峡カミキリ探索

5月6日
 大阪近辺でのマイフィールドを開拓するべく,仕事の空き時間は何時もスマホのGoogle MAPで航空写真を眺めている.電車代やらを考慮して吟味した結果,今回は保津峡駅周辺の山塊に出撃することに.
 自宅の最寄りの地下鉄から大阪駅まで行き,京都線で京都駅へ.そこから嵯峨野線に乗り換えればすぐにこのポイントに着く.片道一時間程で行けるのも嬉しい.駅の周囲からすでに景色が良く,直下を流れる保津川渓谷では川下りなどが楽しめるらしい.
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駅も見晴らしがよく,灯火採集もできそうだ.
 駅からすぐに舗装された林道が続いており,手軽に採集に来たいときには良い感じ.開花している花はフジ,カエデ,ガマズミくらいだが,ミズキやリョウブも生えているため6月頃にもまた来ようと思う.
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林道は非常に歩きやすく,花も掬いやすい位置に多い.
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ガードレール上にいたアオハムシダマシ.日本産は3種群,5種亜群,14種に分けられる.様々な花に訪花するが,ここではアカマツの花に良くいた.
 ガマズミやコゴメウツギには多数のハナムグリが飛来していた.大きさから全てアオハナムグリだろうとスルーしていたが,よく見るとナミハナムグリだったので急いで回収.「ナミ」という名前だがそこまで並ではない.
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ナミハナムグリ Cetonia pilifera pilifera Motschulsky, 1860.
アオハナムグリよりかなり毛深いのですぐ分かる.ここではナミ9:アオ1くらいの割合でナミが多かった.関東では考えられない.
 林道を進んでいると時折大型甲虫の羽音が聞こえてくる.羽音が聞こえると身構えてしまうのは虫屋の病の一つだがこの時期に活発に飛んでいる甲虫と言えば・・・
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オオセンチコガネ Phelotrupes auratus auratus Motschulsky,1857.
 関東の色より若干緑っぽいくらいで殆ど変わらない.ちょっとがっかりである.お馴染みの虫達を摘みながら林道を上っていくと最近できたと思われる小規模な土場が.
 樹種はコナラとイヌシデ.気温が高くなってきた事もあり,伐採木の周りを甲虫が飛び始めた.一頭ずつネットインしていくと大半はナガタマムシの一種であり,そこにシラケトラやトゲヒゲトラが混じってくる.ただ,腹部がオレンジ色をした金属光沢のある甲虫も飛んでいるのだが,なかなかネットイン出来ない.飛んでいる姿では全然見当がつかなかったが,散々待った結果幸いなことにコナラの伐採木に止まってくれたので採集出来た.この種の腹板がここまで鮮やかなオレンジ色をしていることは知らなかったのでちょっと感動.
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アオバナガクチキ Melandrya gloriosa Lewis,1895.今回の採集でますます本種が好きになった.ルリクワガタ系を思わせる体色が憎い!!

 さて,林道もそろそろピークに近づき,いい感じの吹き上げになってきた.こんな場所にカエデがあればな~・・・・あるじゃん!!
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素晴らしい立地条件のカエデさん.見るからに虫が多い.
 ハエやハナバチ類もさることながら,甲虫の飛来数もかなり多いことが肉眼で確認できる.中でも気になったのが花の周りをホバリングするように飛んでいる甲虫だ.何かに飛び方が似ているが・・・直感的に思ったのはモモブトコバネ系.しかしこんな場所で,しかもかなりの量が飛んでいる.とりあえずカミキリなのは間違いないのでわくわくしながらアミを覗くと・・・
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??!!全部クラルアじゃん!!
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クビアカモモブトホソカミキリ Kurarua rhopalophoroides Hayashi, 1951.
 素晴らしい.カエデの周りを飛んでいる甲虫は全てクラルア.網の一振りで4~5頭がネットインするので非常に楽しい.他のカミキリは逃すと何処かへ飛んで行ってしまうが,クラルアはその場で体勢を立て直してすぐに花に向かおうとするのでかなり簡単に捕れることが分かった.しかも飛ぶ速度もかなり遅い.もうこの種を狙って材採する必要は皆無となった. 
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シラホシヒメカツオブシムシ Attagenus pellio Linnaeus, 1758.
やや大型のカツオブシムシで外来種として名高い.世界各国に分布している.

 時刻は12時をまわり,吹き上げ効果もあって様々な甲虫が捕れる.カミキリはヒナルリハナ,キバネニセハムシハナ,チャイロヒメハナ,ナガバヒメハナ,フタオビノミハナ,ミヤマルリハナ,ツヤケシハナ,コジマヒゲナガコバネ,クラルア,ホタル,ヘリグロベニ,ベニ,トゲヒゲトラ,ヒメクロトラ,スギノアカネトラ,キンケトラ,クビアカトラ,ヒトオビアラゲなど.
 クビアカトラはかなり早い記録だと思う.神奈川には普通に居たが,思わぬところで出会うと嬉しいカミキリだ.
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 ここの吹き上げではカエデが7株生えていて,カエデによってカミキリの種にバラつきがあって面白かった.クラルアは一番風が当たらないカエデに溜まっているようだ.しかし一番種数が多いのは上昇気流が当たっているカエデ.これが分かってからは殆どこのカエデに集中攻撃をかけていた.
 午後になってからはカミキリの種数は増えないと思っていたが,ここでさらに意外なものが現れる.
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ムネマダラトラカミキリ Xylotrechus grayii grayii White,1855.
 ムネマダラは狙って捕るようなカミキリではないが,偶然トネリコ,クチナシの材で運動会をしているのを目撃するくらいで,個体数はそこまで多くないカミキリである.寄生蜂を真似たようなカラーリングと触角の動きが特徴.前胸だけでなく腹部も斑模様で美しい.
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結局,カミキリの殆どはカエデ任せになってしまったが,環境的にはかなり良好だということが分かったので時間とお金がないときには良い採集地である.
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カエデポイントでのカミキリ
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トガリバアカネトラカミキリ Anaglyptus niponensis Bates,1884. 帰り道にて.

嗚呼,夏が待ち遠しい!!
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by wriggle00 | 2013-05-19 22:08 | Cerambycidae

備中、新緑の季節②

4月29日
 渓流脇で車中泊をして迎えた二日目.夜間は車内ソーティングと河原でミズギワゴミムシやクロツヤシデムシを採集.今日からの予定は昨日に引き続き日中はカエデを掬い夜間のうちに北上し兵庫県入り.3日目は材採集と伐採地を巡りながら大阪へ帰還する計画だ.本日は朝から気温が非常に高く,無風状態.カエデに訪花する虫の量も増えることだろう.
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林縁の空間は全てクマバチのテリトリー.至る所で♂個体がホバリングしている.

 カエデの花に移動中,何気なく倒木の皮を剥がすとチビクワガタが出てきた.関東近辺ではなかなか出会えないクワガタだがこちらでは個体数は多い.
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チビクワガタ Figulus binodulus Waterhouse,1873.

 そんなこんなで気温がMAXになるまでぶらぶらした後,カエデに向かう.昨日も虫は多かったが比べ物にならない虫の量だった.Glaphyraがカエデ周辺に乱舞しているのが容易に分かるほど.これらを軽く片付け,花掬いを開始する.
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一回のカバーリングで網に入るGlaphyraの数はこれ位.すぐに吸虫管が一杯になる.
 ミヤマルリハナは相変わらずの数.ミヤマルリハナが1000頭に対して1頭位の割合でクラルアが入る感じである.さらに,クラルアだと思ってよく見るとホタルカミキリの場合もよくある.
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クラルアがこうして他の虫と共に網に入っている光景は新鮮である.
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飛び立つ瞬間.
 午後1時を回り,ピークが過ぎたカエデだが,まだまだ飛来数は落ちていない.追加したカミキリはキンケトラ,シラケトラ,アカネトラ,チャイロヒメハナ,ミドリ位.そろそろマンネリ化してきた様子なので,ポイントを移動しようと思い,今まで触れていなかった一回り小さいカエデを掬うと・・・何やら網のそこで大きめのヒナルリが仰向けになってもがいている.随分でかいヒナルリだな・・・と思い捨てようとした瞬間,丁度そのカミキリが起き上がった.うん??前胸背板が赤い.慌ててVIPルームへ移動させる.
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まさかこいつがカエデで捕れるとは・・・
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クビアカハナカミキリGaurotes (Carilia) atripennis Matsushita, 1933.

 これは予想できなかった.アカマツの伐採枝やキク科の花に飛来してきた赤銅色の個体は採集したことがあるが青系は初めてなので嬉しい.思わぬカミキリでテンションが上がったがこれ以降目ぼしいカミキリは飛来しなかったので,兵庫方面へと出発.道中でエゾエノキ,タラノキ,カラスザンショウなどの材を採集した.

4月30日
 前日に兵庫入りしていたお蔭で,朝早くから伐採地へと赴くことができたが,夜間に雨が降っていたらしく道路がかなり濡れている.時間の経過とともに気温は高くなっていったが最後まで太陽が顔を覗かせることはなかった.山道を走っていると所々に伐採地や土場があり中にはかなりの規模の場所もあった.
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ここにはシラケトラ,ヒトオビアラゲ,アオバナガクチキなどがいた.雨のあとで昆虫自体が少ない.
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かなりの規模の伐採地.この上ない環境だが時期が少し早いのと雨の影響でカミキリは少なかった.今後が期待できるポイントではある.
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最後の伐採地.カメラの電池が少なく虫の写真があまり捕れなかった.樹種はコナラ,ホオノキ,イヌシデなど様々.気温が低く,ムツボシタマムシなども素手で簡単に捕獲できるほど.
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ツシマムツボシタマムシ Chrysobothris samurai Obenberger, 1935.

やや大型のムツボシタマムシである.斑紋が一対消失しているタイプも確認した.サムライという種小名がかっこいい.
 ムツボシ狩りをしていると,大きなアカマツ切り株が目に付いた.流石にオサムシは居ないよな.といった感じで樹皮を剥がしてみると,なんとシロマダラが越冬していた.
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シロマダラ Dinodon orientale Hilgendorf, 1880.
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爬虫類を食する小型のヘビ.なかなかお目にかかれない種であり,幻の蛇と言われる地方もある.疑死したのかビーティングネット上でも全く動かない.今年は蛇年なうえに年男なので運が良い.
 運がヘビの方へ傾いてしまったのか虫的には微妙な日だった.最後に一通り伐採地をビーティングして回ったが,ヨツボシチビヒラタが少数落ちてきたのみ.
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ヨツボシチビヒラタカミキリ Phymatodes quadrimaculatus Gressitt, 1935.

 このあと,渋滞が発生する前に大阪へ急ぐ.大した渋滞に巻き込まれることもなく無事にGW採集が終了.今回の一番の収穫は良好な伐採地,土場を数多く発見出来たこと.これからのシーズンがますます楽しみになりました.
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by wriggle00 | 2013-05-08 08:43 | Cerambycidae

備中、新緑の季節①

4月28日
GWを利用し,モンクロベニカミキリの下見も兼ねて,中国地方は岡山県高梁市付近に行ってきた.社会人になってからまともな遠征は初なので気合を入れて採集してきたつもりだ.
 中国地方は昆虫採集に関わらず未踏であるため非常に楽しみである.関東とはどんな違いがあるのだろうか.

 AM6:00.上本町付近でレンタカーを借り,高速道路で岡山を目指すが,大した渋滞もなく9時には現地に着いてしまった.標高はさほど高くないものの,朝は結構冷えるようである.
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いつも混んでいる宝塚付近だが,この日は楽に突破できた.

 兵庫に入り,岡山県境位になると山の雰囲気が大分変ってくる.スギの植栽林が目立たなくなり,山頂まで綺麗な雑木林が広がり始める.人間が育ててきた山々が多いのには素直に感動した.訪れる前までは針葉樹林や照葉樹林が多いものとばかり思っていたのだが,素晴らしい森林が非常に多い.関東平野のスギばかりの汚らしい山とは大違いである.
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こういう山は見ていて飽きることはない.

 目的地である高梁市に到着.勘で林道に突入すると見事な伐採地が迎えてくれた.定期的に伐採が行われているようで,ひこばえが大きく成長している株が多い所もあれば,一週間以内に出来たであろう伐採地もあった.
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カミキリ屋であれば誰もがわくわくするだろう環境だ.
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ひこばえの状態はこんな感じ.モンクロベニの好みそうな材もあったが,この種は成虫の状態で採集したいのと,近いうちにまた訪れるので今回はスルー.積まれた伐採木にはシラケトラやアリモドキカッコウムシなどがいたが,クリストフにも少し早い様だったので長居はしなかった.

 続いて,カエデの花掬いのためカエデを探す.このあたりからかなり気温が高くなり25℃という最高のコンディションに.4月の山で半袖で採集出来るとは.
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のんびり山道を走っているとこんな感じにカエデが.
 長竿を準備していると何やらカサカサと音がする.どうせヒトリガ幼虫だろうと思い目をやるとでっかいマイマイカブリだった.そうか.もうそんな季節だもんね.
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ホンマイマイカブリ Damaster blaptoides blaptoides Kollar, 1836.
まだ本調子ではない感じ.越冬明け直後なのだろう.
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ありがたく頂きます.う~ん,芳醇なかほり.

 気を取り直してカエデタイム.目ぼしいカミキリは少ないが,半年ぶりに網を振るうとやっぱり快感.オサ掘りも良いけど採集はこうで無くちゃな.カエデの下で煙草を吸いながら飛来を待っていると明らかにGlaphyraの機影が.こいつらは飛び方が弱弱しいのですぐ分かる.
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オダヒゲナガコバネカミキリ Glaphyra gracilis Hayashi,1949.
ホソツヤと似ているが,触角第5節以降の微毛と腹部の毛の状態で区別できる.

 他にこの場所で確認できたカミキリはヒナルリハナ,キバネニセハムシハナ,セスジヒメハナ,ヒメクロトラ,トゲヒゲトラ,コジマヒゲナガコバネ,ホタルカミキリくらいだったので,大きく場所を移動することに.さらに山奥へ標高を上げていくと二つの小さな山に挟まれた谷のような環境にカエデが群生しているのを発見.こういうところは虫が溜まりやすい.
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道路から少し離れたところにカエデが10本以上生えている.

 カエデを見てみると夥しい量のハナバチやケバエ,ヒゲナガの類が乱舞している!素晴らしい・・・花も完全に満開状態.これは期待できる.
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虫の羽音が最高のBGM.
 さっそく“軽く”花を掬ってみると訪花していた昆虫が一斉に飛び立ち辺りが竜巻のようになった.伊那も虫の量は多かったがここはそれ以上の規模である.花を掬った網を見ても驚いた.草原を100m以上スウィープした時に匹敵する虫の数だ.
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開幕でこれである.吸虫管で吸うのが追いつかないほど.

 呼吸困難になりながら虫を回収していると,あることに気付いた.ミヤマルリハナカミキリの個体数がけた違いに多いのである.関東だとカエデを一回カバーリングしたときに入る常連のカミキリは,ヒナルリハナやキバネニセハムシハナだが,ここでは90%がミヤマルリハナなのだ.ミヤマルリハナといえば,学部生時代にわざわざ大菩薩周辺まで捕りに行った思い出があるが,それがこの有様.ためしに他のカエデで思いっきり掬って数を数えてみたが・・・227exs・・・・・・・う~ん;ヒナルリだって普通こんな入んねえよ・・・まあ,好きなカミキリではあるので容赦はしないが.
 そんな感じでミヤマルリハナの中からカエデノヒゲナガコバネやコボトケヒゲナガコバネ,シラケトラなどを網の中に頭を突っ込んでソーティングしていると・・・
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クビアカモモブトホソカミキリ Kurarua rhopalophoroides HAYASHI,1951
 岡山県では臥牛山のみに分布しているそうだがMyポイントを開拓してしまった.付近の林にはソヨゴは生えていなかったが,クロガネモチなどのモチノキ科樹木は確認できたのでそういうものを食べているのだろう.
クラルアが捕れた時点で時刻は17:00を回り,カエデの集虫力も落ちてきたのでこの日は採集終了.温泉に入って山の中で車中泊.車外に一応ブラックライトを置いておいたが甲虫はSericaniaの一種のみだった.

2日目に続きます.
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by wriggle00 | 2013-05-01 18:41 | Cerambycidae